愛しまつる主イエス・キリストが、 この地上において最後にそのみ足の後を印されしところ、 やがてまたキリストが地上再臨されるそのとき、 最初にこの地上にそのみ足をもって印されるところこそ、 ゼカリヤ書第14章4節に預言されているごとく、 「その日には彼の足が、東の方エルサレムの前にあるオリブ山の上に立つ」 実にキリスト御昇天のその地点なのである。 |
キリスト御昇天の地を記念して、 紀元370年の頃最初の聖堂が建てられたのであったが、 それは破壊され、 その後十字軍によって再建されたものが、現存する八角形の小さな聖堂である。 建てられた当初は、主が昇天された方向に自然に目が向けられるように、 丸い掩蓋(えんがい)の天井はなく、 また下部八方のアーチ型の部分にある壁もなかったのであるが、 回教徒がこの聖堂を占領し、それをイスラム寺院となし、 現在の姿に変更してしまったのである。 堂内の直径は6メートル、 その中心点に、キリストが昇天されし時印されたと伝えられる足跡が、 石灰岩の上に刻まれている。 その歴史的真実性については、明確に決定されているわけではないが、 敬虔な巡礼者達の中には、感動のあまり接吻する人々を多く見かける。 わたしは過去三度その聖地を訪問したのであるが、 その足音の信憑(ぴょう)性は問題ではなく、 キリストが昇天されし歴史的な地点に、 自分自身立っているという感動は極めて強烈であった。 |
そこ、850メートルのオリブ山頂からの眺望は、 表現のことばを見いだし得ない程、感動的であり印象的である。 キリストの生涯と密接な関連をもつ、 数多くの聖跡をパノラマのごとく展望することができる。 それはあたかも生きた聖書をみる観があるからである。 |
東南山麓には、ベタニヤの村が点在し、はるか彼方にはモアブの連山を、 西方眼下にはエルサレムを一望のもとに見ることができる。 空は紺碧(こんぺき)に澄み渡り、ここに立っていると、次の瞬間にでも足は対地より離れ、天に挙げられるのではないか、 キリストが昇天されしその地点から携挙(けいきょ)されるなら、 それはいかに幸いであり、すばらしいことであろうかと思わないではいられなかった。 |